【観光】立ち止まるからこそ見える「苔ガール」

観光ガイド 玉川えみ那さん

新しい観光スタイルを提案 眠っていた青森の魅力を発信

玉川えみ那

「奥入瀬なんてどこにでもある観光地」。玉川えみ那さんは東京の大学に進学するまで、地元にあった奥入瀬渓流や十和田湖のことを深く理解していなかった。ほとんど行く機会すらなかったという。大学を卒業後、東京に残り、小売業に就職。自宅から満員電車で通勤する毎日に、四季を気温でしか感じることができなかったと振り返る。そんな中、父親が十和田湖・奥入瀬の魅力を発信するアウトドア会社を立ち上げる。メンバーの中に北海道から加わった人がいたことから「自然豊かな北海道から、なぜ青森に?」と、改めて故郷の自然について考えるようになった。

東日本大震災の翌年、玉川さんは仕事を辞めて1年という期間を目安に青森へ帰郷した。「震災の影響で観光客が激減した時期で、自分でできる範囲で手伝いをしたかった」と玉川さん。しかし、そのまま十和田で在住し続けることに決める。当時は、青森に戻ったところで仕事はないだろうという不安の方が大きく、帰郷するという選択肢はなかったが、「ここでしかできないことをこの場所でやりたい」という気持ちが強くなった。その理由を「苔と出会ってしまったことがその一つ」と話す。

苔ガールとして青森の魅力を

玉川えみ那

玉川さんが現在所属する奥入瀬自然観光資源研究会(おいけん)は、奥入瀬・十和田湖エリア全体を従来型の周遊観光ではなく、新しいスタイルでその魅力を発信し、また学術調査や次世代を対象とした自然学校開催に取り組むNPO法人。そこで玉川さんが苔と出会ったきっかけは、ある図鑑だった。「顕微鏡で見た苔の世界がまるでガラス細工のような美しさがあった」。実際にルーペで苔の世界を覗きこみ、その世界を案内するガイドになるまでに多くの時間は必要としなかった。10年前、まさか自分がこんな業界に足を踏み入れているとは想像すらしなかったと笑う。

生活だけでなく仕事への姿勢も変わった。苔の魅力をどのように観光客に伝えるかを考えるようになり、自分自身も苔について積極的に調べるようになった。「景色を見せるだけの観光スタイルではもう集客はできない。その景色が生まれた理由を伝え、一緒に楽しむような体験が必要。奥入瀬渓流の苔はまさに伝えてこそ分かる魅力」と玉川さん。年間で200万人の観光客が訪れると言われる中、ガイドと一緒に観光する人はまだ一握り。「苔ガール」として奥入瀬だけでなく、青森の魅力を発信しようと今日も奮闘する。

玉川えみ那さんからのメッセージ
  • 「立ちどまるから見えてくる!」は、観光地を巡る従来型の観光とは違う観光スタイルの提案と、これからの生き方も重ねたメッセージ
  • 玉川えみ那
  • 青森県十和田市出身
  • 勤務先:奥入瀬自然観光資源研究会(おいけん)
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