リーダーの役割とは 【1】

人文社会科学部 社会経営課程 企業戦略コース 高島克史先生に聞く
高島克史

高島 克史

弘前大学 人文社会科学部 社会経営課程 准教授

専 門 経営学
研究テーマ 経営戦略・経営管理
授 業 経営学の基礎、経営管理論
ビジネス・シュミレーション実習など

リーダーの役割【ルーブリックより】

  • 目標の実現に向けてチームを組織し、メンバーを動かすことができる

1.人と人をつなぐネットワーキング

———高島先生はルーブリック開発の担当者のひとりとして、ルーブリック全体の開発にも携わって来られました。その中で、特に今回のテーマである「リーダーの役割」については、高島先生ご自身の専門と近いこともあって、深い思い入れをお持ちであると聞いています。高島先生がどのようにリーダーの役割を考えておられるのか、具体的な人物像をあげてご解説いただけますか。

高島克史

髙島:リーダーの役割とはなにか。この問に対する唯一最善の正解はありません。自分たちで、皆が納得できるようなリーダー像を模索していくしか無い。そこで我々は実際に青森県でリーダーとして活躍されている方々の行動パターンを分析し、そこから共通性や顕著な特徴を抽象化していく形で、弘前大学の地域志向人財としてのリーダーの姿を描き出すよう試みました。

 具体的に想定したのは、公共団体の職員として地域振興に尽力されてきた方、観光コンベンション協会の方、東京からUターンしてきて地域の観光資源のビジネス化を目指す起業家の方などです。

 彼らは共通して人と人をつなげる役割を担っていました。地域振興と一言で言っても、地域にはいろいろな人が住んでいますし、働いています。例えば「産学官連携」という言葉がありますが、産業・大学・行政で連携しようとしても、それぞれの職業的背景が違えば、考え方も違ってきます。こうした状況下にあって、人と人がつながることは簡単ではない。この簡単ではない仕事を、先に上げたリーダーたちは担っています。この役割は、経営学ではネットワーキングとも呼ばれます。

2.縁の下の力持ち

———自分とは考えかたが異なる人間とコミュニケーションをとるだけでもかなり大変なのに、更に考え方を異にする多種多様な人間をつなぎあわせ、組織としてまとめていくのは本当に大変そうです。

髙島:大変です。だからこそネットワーキングには、しつこさが求められます。例えば自分のアイデアが誰かに否定された時、そこですぐに諦めず、第二。第三のアイデアを出していかないといけない。連携協力の提案が断られても、粘り強く相手を説得しなければならない。ネットワーキングには精神的なタフさが不可欠です。

 逆に、精神的なタフさを育成するためには、ネットワーキングを経験することが重要です。自分と考え方が異なるパートナーとともに仕事を進めていくということは、今までの自分とは違った新しい考え方を学ぶ絶好のチャンスであるとも言えるからです。

———高島先生の話を聞いていると、マスメディアで取り上げられるようなリーダーとは異なるリーダー像が浮かんできます。メディアには、しばしば「人を惹きつける魅力があって、崇高な理念を提示して組織のメンバーを導き、様々な障害を突破していく」といったヒーローのようなリーダーが登場しますが・・・

髙島:ヒーローのようなリーダーを否定するわけではありません。しかし、今回のルーブリックに込めたリーダー像は、ヒーローとは違います。むしろヒーローを支える縁の下の力持ちのようなリーダーです。

高島克史

 一例を挙げるとすれば、ヒーロー型のリーダーとして本田技研創業者の本田宗一郎を挙げることができます。彼は技術者あがりの叩き上げ経営者で、社員から「オヤジ」と慕われていたと言います。技術者の誇りを忘れず、多くの技術者を育てながら会社を大きくした彼の人生は賞賛に値するでしょう。他方で、本田宗一郎を支えた人物として藤沢武夫という企業参謀がいたこともよく知られています。藤沢は本田技研の財務や販売を取り仕切って、企業活動の地味だけど重要部分を一手に担った人物です。

 本田宗一郎と藤沢武夫はいずれも傑出したリーダーですが、今回の地域志向人材のイメージに近いのは、どちらかと言えば藤沢武夫の方です。我々は2010年度から『地域とともに育む大学生の就業力』というプロジェクト・ベースド・ラーニング(Project based Learning;PBL)を実施していますが、この中でも学生に「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)のような、地味だけどチームとして働くためにとても大事なことを忘れないように」と伝えています。そういった小さなことをコツコツと積み重ねていかなければ、大きな仕事はできないからです。

3.PBLを通したリーダーシップの育成

———今お話にあがった『地域とともに育む大学生の就業力』とPBLについて教えてもらえますか。

髙島:PBLは課題解決型学習とも呼ばれる教育方法です。PBLでは、文字通り、学生には特定の課題を解決していくことが求められます。教員は学生が自分たちの力で課題を解決していくプロセスを、かげながら支える役割を担います。学生たちは今までに大学で学んできた知識を活用して課題解決に取り組むことになります。

 一般的に、PBLでは個人単位ではなくチーム単位で課題に取り組みます。グループワークを活動の中心に据えることで、チームのメンバーと協力して解決を目指すというリーダーシップを発揮する経験を得ることができます。この経験は、リーダーの役割を学ぶ機会となります。

 そして少なからぬ企業は、学生に「実際に課題解決に取り組む経験を積んで欲しい、大学に在学中からリーダーとしての経験を積んで欲しい」と願っています。このようなニーズに応えるために、本学では『地域とともに育む大学生の就業力』という教育活動を実践しました。ここでは地域企業から提案された課題を学生の視点から考え、そこで得られた解決策について自らの手で検証し、更には、最終的な企画提案を行うという活動を実施しました。

 『地域とともに育む大学生の就業力』で、学生たちは教員から与えられた役割を単に順守するだけでは乗り切れないような難しい局面に何度も直面します。この時に、彼らは自分からグループのメンバーに働きかけ、仕事を協働的に管理していく必要に迫られます。この必要性を満たすために、学生は悪戦苦闘することになるんですが、この悪戦苦闘の中で、学生はリーダーの役割を身につけていくことになります。

高島克史

 学生の悪戦苦闘については、印象に残っているチームがあります。このチームはほんとによく喧嘩していました。毎日のようにメンバーの中の誰かが私の研究室に泣きに来ていました(笑)。私も彼らの努力が報いるためにも、彼らの言葉に耳を傾け、アドバイスを与え,彼らの努力が実を結ぶよう尽力しました。
 最終的には、彼らは『地域とともに育む大学生の就業力』の最後にしっかりとした企画立案を行い、実際にある商品を開発することになりました。また『地域とともに育む大学生の就業力』が終わってからも地域のイベントに参加したり、そこで発表したり、非常に積極的に地域にコミットメントしていました。彼らはPBLにおける課題解決の過程から非常に大きなものを学び取ったと言えるのではないでしょうか。

次ページへ続く)

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