【基準8行動例】社会行動コースでの学びを地域づくりに活かす

小寺 将太(人文学部 現代社会課程 社会行動コース)

1.島根県地域づくりインターンシップへの参加

———COC推進室コーディネーター野口助教からの紹介があって、小寺くんは島根県の「地域づくりインターンシップ」に参加したと聞きました。参加の動機について教えてもらえますか。

島根県浜田市井野地区小寺:私が所属する「社会行動コース」のカリキュラムには、社会調査実習という科目があります。社会調査実習では、インタビューやライフヒストリー調査、参与観察、質問紙調査など、様々な方法を用いて、主に青森の地域社会の実態に迫ります。その中で社会調査の方法論について学んだり、地域社会に様々な姿を知ることが出来ます。

 この社会調査実習を通して、私は「地域」というものに興味を持つようになりました。地域の人と対話する中で、地域の伝統文化、町会のコミュニティの様子、地域の人々の生活の知恵を知ることができます。地域の人たちの話を聞くだけでもとても楽しい体験です。

 今は社会行動コースの曽我亨先生のゼミに入って、人類学の観点から、東通村で生産されている作物の地産地消の実態について調査しています。

 また同じ社会行動コースの杉山祐子先生がリーダーとして実施されている「集落点検」にも参加しています。集落点検は、地域の方の声に耳を傾け、地域の姿を直に見て、地域づくりのニーズを明らかにする活動です。

———インターンシップでは、どんな活動に取り組みましたか。また印象に残っていることも教えて下さい。

わら細工体験小寺:インターンシップでは最初に「いま暮らしている人たちがいきいきと暮らしいけるための提案をする」という課題を与えられます。学生は10人ほど参加していたようです。私は島根県浜田市の井野地区に入りました。宿泊は地域の方の家におじゃまするかたちです。

 インターンシップでは、先ほどあげた課題を念頭に置きながら、様々な活動に取り組んで地域の魅力や課題について多角的に学んでいきます。そして最後に成果報告会を実施します。

 インターンシップでの活動内容は本当に多岐にわたります。すべてメモしているので、ここでそれを列挙すると・・・夏祭りの準備(うちわ作成)、神楽の準備と練習、草刈り、玉ねぎの包装、そばの種まき、紙漉き、そばの加工場(みんなが集う場所をつくりたい)工場のペンキ塗り等、井野っこクラブ、地区の野球大会、夏祭りで駐車場整備、来場者アンケート、盆踊り準備、座禅体験、「いいところマップ」づくりに地域まわり(集落点検)、ブルーベリー実習、きゅうり畑での実習(生産から出荷まで)、牛の世話、竹細工・わら細工、青空教室(自然体験教室)、三隅川フェスタ、灯篭流し、ほおずき・クリの採集といった感じです。

ワークショップ これらの細々した活動の中で、ワークショップも行いました。地域の人を集めて、「井野のいいところ」をテーマにしたディスカッション「あったら良いな井野」を行いました。参加者は、高齢者数名、子ども数名、壮年期の方10名弱でした。

 ワークショップにたくさんの方が参加してくれたことからもわかるように、井野地区では、特定の数人が地域づくりに参加するというよりも、地域の人がみなで地域づくりに参加していて、これがとても印象に残っています。特に新しい行事をつくる活動では、若い人たちが村の伝統に固執せず、村の伝統を発展させたり、伝統を新しくつくりだしていくような柔軟な活動に取り組んでいるようでした。

2.地域の人々と信頼関係を築く ―社会調査実習のノウハウを発展させる―

———とても良い刺激を受けたみたいですね。

小寺:社会調査実習で地域の人たちと交流する機会はたくさんあったんですが、それでも「誰かの家に一ヶ月住み込む」という経験はありませんでした。一ヶ月寝食をともにして、お金の話や地区内の葛藤など、外部から見えてこないような地域の構造を徐々に知ることが出来ました。

 あと、地域の方とともに生活する中で、地域の人々に対する接し方も少し変わったかも知れません。私はもともとワーワーしゃべるタイプだったんですが、長期的に多数の人々と交流する中で、地域の人の個性にあわせて、自分のコミュニケーションのスタイルを変えられるようになった気がします。

ペンキ塗り 例えば、地域の中には無口な方もおられました。そういった方と打ち解けるためには、私の方から積極的に話しかけても、話は盛り上がりませんでした。むしろ一緒に黙々と草むしりをしたり、ともに農作業をする方が、効果的でした。

 労働を共有する中で、言葉以外のコミュニケーションの密度は上がっていきます。その蓄積は、徐々に信頼関係へとつながっていくようです。

 インターンシップのおかげで、集落点検のやり方もかわりました。昔はとにかく自分がから話しかけるようにしていましたが、インターシップ後は、例えば家庭菜園の収穫を手伝うなど、言葉以外のコミュニケーションを重視しています。

3.よそ者の眼を活かした観光企画 ―参与観察を応用した地域づくり―

———最後の成果報告ではどんな内容を報告したのでしょうか。

成果報告会小寺:成果報告会では「ぶらりぃーのサイクリング」という観光企画を提案しました。インターンシップを通して、井野地区には棚田や紙漉き工房ブルーベリー農園、炭焼きわら細工、野菜など様々な体験的な観光資源が隠れていることに気づきました。しかし、井野地区に住む人々はこれらの魅力的な観光資源にすっかり慣れており、当たり前のものとしてその価値に気付かないままになっていました。

 なので、井野地区をもっと知ることができる体験型の観光サイクリングを提案しました。自転車の上から、普段とは少し違った角度で、井野地区の魅力に気づいて欲しいという狙いがあります。

 実はこの企画には、「元ネタ」があります。それは先程もお話した杉山先生が提案されている「ご近所観光」です。ご近所観光とは、「自分が当たり前だと感じている日常の風景を新鮮な眼差しで捉え直すために、遠くに住んでいる友人や家族を自分の近所に招いて、その人ともに近所を観光して回る」というものです。更に、「ご近所観光」の背後には、自分の文化圏とは異なる共同体の生活や行動をよそ者の眼で見つめなおす、「参与観察」の発想も潜んでいます。

———小寺くんの提案は、その内容もさることながら、アイデアを生み出す過程・背景が素晴らしいです。地域課題への解決策を、単なる自分個人のひらめきや思いつきだけに依拠して提案するのではなく、大学で学んだ知識や技能をフル活用して提案しています。

 「大学で『学問知』として学んだ知識や技能を、社会で『実践知』として洗練させていく」というのは、本学のCOCが目指す地域志向教育の一つの理想になるかもしれません。学問知と実践知を往復する中で、小寺くん独自の「社会の見方」を築き、社会の様々な課題を解決していくことができれば最高ですね。

(聞き手・編集:COC推進室 西村君平)

【基準解説】地域課題へ専門知を活用する力とはなにか
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